また君に会いたいとか

日々の備忘録

【勝手に解釈】:「うめぼし」(スピッツ)

 

 

「うめぼし」(作詞・作曲:草野正宗)は、

スピッツのデビューアルバム『スピッツ』(1991年)の

11曲目に収録されています。

 

 

☆大人になっていく寂しさ

 

※あくまで私なりの解釈で、

 これを強要するとか、他の解釈を否定する意図はありません。

 【勝手に解釈】は、私の妄想のページと思ってください。

 

 

「僕」は、今まさに夢に手が届く寸前。

或いは、社会で生きていくということがわかってきた頃。

でも、これでいいのか不安になっている。

 

大人になる前に、

夢を掴もうとする前に、

ちょっと立ち止まってしまい、

変わっていこうとする自分を客観的に見つめ、

夢を追いかけていた無垢な時代を懐かしんでいます。

 

昔から馴染んできた、素朴で懐かしいうめぼし。

おばあちゃんやお母さんの愛が感じられるうめぼし。

うめぼしのようなほっとできる安らぎが恋しい、

そして、酸味の効いた愛あるムチも恋しい。

純粋無垢だった頃の自分にはもう戻れない。

 

大人の仲間入り時期の、そんな葛藤が垣間見れます。

 

 

 

 

歌詞を少しずつ見ていきます。

 

 

 

うめぼしたべたい

うめぼしたべたい僕は今すぐ君に会いたい(※)

 

「うめぼし」は、慣れ親しんだ安心できるものであり、

僕の原風景でもあると思います。

「君」は、「本来の自分」だと思います。

 

自分の置かれてる状況に、とまどっている様子です。

バンドマンとしてステップアップするチャンスを得たのでしょうか。

でも、これでいいのか。

自分が憧れてきた姿なのかどうか。

もう一度自分の原風景を確認したいのです。

 

そうでないと、このままだと

本当の自分がわからなくなりそうだ。

本来の自分に、「これでいいのか?」と問いかけています。

 

とても寂しい

とても寂しい僕は今すぐ君に会いたい

 

描いてきた夢と現実が乖離してるような気がする。

自分と離れたところで世界が進んでいるような気がする。

周りの誰もそんな僕の心に気づいてないような気がする。

このまま大人になっていくのが怖くなっているのです。

 

無我夢中で駆けてくるうちに、

自分が何を望んでいるのか、

これでいいのか、

ふと、わからなくなってきたのでしょう。

行き先を見誤ってるのではないか?

 

値札のついたこころ 枠からハミ出せない

星占いで全てかたづけたい

 

「値札」は買ってもらいたいものに付けるもの。

買ってもらうために、体裁を整えたり味をよくしたりします。

人目を引くように、多くの人から好かれるように工夫するのです。

時には、値段を下げたり。

 

「値札のついたこころ」は、

人に良く思われるのを待っている自分でしょう。

そんな自分はもう、周りに合わせていくしかないのです。

顔色をうかがったり、空気を読んだり。

自分のしたいことばかりじゃいけないのです。

もう子供のままではいられないのです。

 

「星占い」は、

ツイてる日は○日、

今日は~をすると運気が上がります、

などと、教えてくれます。

そのとおりにやっていけばどんなに気楽だろう。

何も考えなくてもうまくいくのなら。

 

知らない間に僕も悪者になってた

優しい言葉だけじゃ物足りない(*)

 

「悪者」は、自分がそうありたくないと思っていたような人間。

仕方なく周りに合わせたり妥協したり、

嫌われないように、悪く思われないように、良い人でいる。

本音は隠して、波風立てないように要領よく。

 

気づいたら、自分もそんなふうになってきている現実に

気づき始めて落胆しています。

いつの間にか大人の仲間入りをしていたのです。

 

自分にかけられる言葉は優しい言葉ばかり。

大人は人間関係を平穏に保つために、

相手を思い遣った上手な言い方をするものです。

でも僕は、褒められたり良いことを言われても、

本心からの言葉かどうかわかりゃしない、と思っています。

本当に自分のためを思ってくれてるのか、

信用していいのか、わからなくなってきたのです。

 

(※くりかえし)

 

うめぼしの素朴な優しさや懐かしさを懐かしむと同時に

酸っぱさにシャキーンとなるような

本音の言葉を期待しているのかもしれません。

おばあちゃんやお母さんは、本音で叱ってくれますもんね。

大人になると、周りから言いにくい(酸っぱい)言葉は

あまりかけられなくなりますから。

良い人でいればいるほど、

叱られることがなくなってきます。

 

穴のあいた長ぐつで水たまりふんづけて

涙が出るほど笑いころげたい

 

穴のあいた長ぐつで水たまりに入ると

くつに泥水が入って歩きにくくなります。

靴下も長ぐつも汚れてしまい、お母さんを困らせます。

そんなことはみんなわかってます。

子供は訳もなく楽しいのです。

 

してはいけないことかもしれない、

くだらないことかもしれないけど。

心のままに屈託なく笑いたい。

でももう、子供のようなことはできないのです。

思いもよらなかった寂しさを感じています。

 

心から楽しんでいないのではないか。

夢を叶えるために、大人になるために、

大事な何かを引き換えにしているような気がしているのです。

でも大人になるって、そういうことではないでしょうか。

 

(*くりかえし)

(※くりかえし)

 

 

 

 

【歌の感想】

 

アコースティックのアルペジオで始まり、

ストリングスも加わって優しく穏やかに流れる歌です。

ノスタルジックな気分になりますが、

同時に、チェロ?の重い響きが心にずしんときます。

 

自分を取り巻く環境が変わっていく不安、

自分が大人の世界に染まっていく恐怖と悲しみ、

子供のままでいたいという切なさ、

そんな感情が入り混じってるように感じます。

 

ちょっと立ち止まって考えたい、

モラトリアムのような時期でしょうか。

誰にでも多かれ少なかれあるのでしょうが、

そんな多感な、自分でどうにもしにくい気持ちを

「うめぼし」の素朴さを使って表現した歌だと思います。