また君に会いたいとか

日々の備忘録

【勝手に解釈】:「夏の魔物」(スピッツ)

 

こんにちは、トパーズです。

 

 

夏の魔物」(作詞・作曲:草野正宗)は、

スピッツのデビューアルバム『スピッツ』(1991年)の

10曲目に収録されています。

 

 

君には太刀打ちできない

 

 

 

※あくまで私なりの解釈で、

 これを強要するとか、他の解釈を否定する意図はありません。

 【勝手に解釈】は、私の妄想のページと思ってください。

 

 

「魔物」は、自分たちでは太刀打ちできない大きな力を持った何か。

「甲子園には魔物がいる」と言われるように、

不利な戦況を変えてくれるような(逆もあるけど)

不思議で偉大な力を持った何かを、

畏敬の念をもって「魔物」と呼んでいると思います。

 

君と僕の関係には、何かしら困難があるのでしょう。

未熟で無器用な僕には打開できる力もなく、

君が去っていく気配に

不安になっているのだと思います。

 

何とか君を繋ぎとめたい僕は、

「魔物」にすがるしかなかった。

 

もしかすると「魔物」は「君」そのものだったのかも?

 

 

歌詞を少しずつ見ていきます。

 

 

古いアパートのベランダに立ち

僕を見おろして少し笑った

なまぬるい風にたなびく白いシーツ

シーツを干した2階のベランダで僕を待つ君。

満面の笑みでなく「少し笑った」のが気になります。

 

魚もいないドブ川越えて

幾つも越えて行く二人乗りで

折れそうな手でヨロヨロしてさ 追われるように

ここの描写は、実際の行動ではなく

僕の境遇を表しているのだと思います。

 

二人で困難な道をくぐり抜けてきたのです。

無器用で手探りで、おびえながら、逃げるように。

君を失いたくないとただ必死で。

 

幼いだけの密かな掟の上で君と見た

夏の魔物に会いたかった

他の逃げ道や選択肢もわからない未熟な僕は

君に従うしかないと決めていたのです。

君にはどうにもかなわないから。

君と描いた未来図を二人で見ていたかったけど。

結局君の心を繋ぎとめられなかった。

「魔物」が君の心を変えてくれるかと期待したけど

結局「魔物」は現れなかった。

 

「少し笑った」のは「別れ」を決めていたからでしょう。

 

大粒の雨すぐにあがるさ

長くのびた影がおぼれた頃

ぬれたクモの巣が光ってた 泣いてるみたいに

ここは、自分に言い聞かせているのだと思います。

 

たくさん流した涙もやがて枯れるだろう、

傷が癒えてくる頃には。

主のいないクモの巣が雨に濡れて

泣いてるみたいだ、僕と同じように。

 

殺してしまえばいいとも思ったけれど 君に似た

夏の魔物に会いたかった

「魔物」なんているわけないし

君の決断なんて容易に覆ると思っていたのでしょう。

でも君は僕にとって太刀打ちできない、

さしずめ「魔女」のような存在。

全て君の意のまま、なすすべもなく。

君の気持ちを変えるなんて僕にはできないのです。

 

「殺してしまえばいい」はキャッチーなフレーズです。

不穏に聞こえますが、いわゆる「殺生」ではないと思います。

「オケラ」や「コオロギ」まで歌詞に登用するくらいですから。

「魔物」になんて頼らなくてもいい、ということでしょうか。

 

幼いだけの密かな掟の上で君と見た

夏の魔物に会いたかった

僕の呪文も効かなかった

夏の魔物に会いたかった

呪文を唱えるくらい切実に願っていたのです。

行かないでほしい、

ずっとそばにいて欲しい。

でも君は別れを決断した。

夏の魔物は現れなかった。

僕は君を止めることはできない。

 

「会いたかった」の連呼は

「(君に)いてほしかった」という

無念と未練の叫びのように聞こえます。

 

 

 

 

【歌の感想】

 

とても切ない歌だと思いました。

君にぞっこん(←死語?)で、

何でも聞くよ! 何でもするよ!状態の僕は、

「神様お願い!」とばかり、

「神様」より強力な魔性がありそうな「魔物」に懇願しますが、

君の強い意思には逆らえず、

一人涙を流します。

 

「魔物」という得体の知れない表現を用いていますが、

よほど君が離れていくのが怖かったのでしょう。

君にはかなわないと思ってますから。

「魔物に会いたかった」は、

「魔物」=「太刀打ちできない君」にそばにいてほしかった

ということかもしれません。

 

去っていく君を止められなかった虚しさ、

やっぱり君は去っていくんだという現実に

すごく落ち込んでいる様が伝わってきます。

 

そして何より、夕立や雨上がりの夕暮れを連想させる、

夏の湿気を帯びた生ぬるい風が吹いているような歌詞。

無念さを嘆いてるような歌声・歌い方が切ないです。