「ハチミツ」(作詞・作曲:草野正宗)は、
スピッツの6枚目のアルバム
『ハチミツ』(1995年)の
1曲目に収録されています。
☆珍しい宝石は
手に入りましたか?
※あくまで私なりの解釈で、
これを強要するとか、他の解釈を否定する意図はありません。
【勝手に解釈】は、私の妄想のページと思ってください。
頑なに閉ざしていた僕の心を
開いてくれた君に憧れ
いけないことと承知で
アタックした。
唯一僕を理解してくれる君に。
君は僕の素敵な恋人。
もう後には戻れないから。
青文字は、
「ハチミツ」(作詞・作曲:草野正宗)より抜粋
歌詞を、
曲の流れではなく
私が想像する意味に沿って句切って書いてみました。
一人空しく ビスケットのしけってる日々を経て
出会った君が 初めての 心さらけ出せる
「ビスケットのしけってる日々」
冒頭から可愛い単語「ビスケット」。
その美味しそうなお菓子を、
「しけってる」と表現。
天邪鬼でひねくれ者と思われてると思ってて、
矛盾だらけの世の中に辟易して
ずっと自分の殻に閉じこもって
でも周りのことはよく観察してて
そのくせ周りにいっぱいバリヤを張って
自分を素直に出すことをせず
鬱々とした日々を送っていた僕。
そんな僕が出会った君は
無理に自分をガードしなくても
自然に自分をさらけ出せる
心を許せると思える人だった。
倒置法のような言い方で
ストレートに表現してないところが
スピッツっぽい(草野さんっぽい)。
それともメロディ先行で、
そういうふうに歌詞を置くしかなかったんだろうか?
冒頭に「ビスケット」が登場したから
この歌が甘く可愛い雰囲気になったと思います。
素敵な恋人ハチミツ 溶かしてゆく
こごえる仔犬を暖めて
そもそも、この題名の「ハチミツ」、
(アルバムの名前にもなってるし)
英語で「ハニー(恋人)」ってことじゃないですか?
そういえば、既に「ハニーハニー」って歌がありましたね。
(『惑星のかけら』1992年)
今回は「ハチミツ」なので、
冒頭の「ビスケット」に結びついて、
何となく素朴な感じがする。
で、「蜂蜜」ではなく「ハチミツ」。
と、「ハチミツ」にこだわってしまいましたが。
というのも、
「恋人」が「ハニー」だとすると
それは「ハチミツ」にかかってますよね。
だから、上記のように
歌詞を区切ってみたのです。
♪素敵な恋人ハニー!
君は僕をメロメロにしていくよ
みたいな・・・。
そうすると君が
「溶かしてゆく」のは
ハチミツではなく
頑なに閉ざしていた僕の心、
しけった日々なのでは?
それは、
「こごえる仔犬」を「暖めた」らしい。
僕はずっと
自分を見透かされないように
おどおどした仔犬のようだったのかもしれません。
もちろん、
君の優しさで
固まったハチミツも溶かすし、
こごえる仔犬も安心させてあげられた、
と解釈することもできると思います。
懐かしい遊びが甦るのは
灯りの場所まで綱渡りしたから
「灯り」は、似たような表現が
スピッツの歌ではよく使われています。
♪あのキラキラのほうへのぼってく(「正夢」)、
♪遠くの灯りのほうへ(「夜を駆ける」)、
♪小さな赤い灯を守り続けていくよ(「スカーレット」)
♪光に導かれていくよ(「ラズベリー」)
などなど・・・。
自分の焦がれる憧れの存在
自分にとって大切なもの
自分の望む未来や幸せ
などを表していると思います。
この場合は「君」だと思います。
そこまで「綱渡りした」、と。
子供の頃、揺れる綱の上を
バランスを取りながら落ちないように
目的の場所まで
そろりそろりと、ガクガクしながら渡った。
そんな懐かしい遊びがあった。
無心に渡った子供の頃を思い出したでしょう。
でも今度の、大人になってからの綱渡りは
かなり危険だったはず。
「灯りの場所まで」とあるので
そこまでは真っ暗。
助けてくれる人や理解を示してくれる人もなく
白い目で見られていたかもしれない。
ただ向こう側の「灯り」(君)を頼りに
ひたすら進む。
足をすべらせたら(失敗したら)
二度と君に会えなくなるだろう
とても危険なタイトロープ。
「灯りの場所」まで
たどり着いたのでしょうか。
ガラクタばかりピーコートのポケットにしのばせて
意地っ張り シャイな女の子僕をにらみつける
「ピーコート」を着てるのは、僕。
人が見たら「ガラクタ」と思いそうな
くだらないと思われそうな
夢や希望や、数々の自分を守るバリヤー、
スピッツの歌によく出てくるいわゆるナイフだって
ポケットに隠し持っている僕。
僕は「意地っ張り」だから
君に聞かれても
ポケットになんか何も入ってないと答える。
「シャイな」君が興味を示しても
見せる勇気もない。
でも君は僕の頑なな心を見透かしていて、
隠し持ってる「ガラクタ」も
どんなもの(こと)か
何のために隠し持ってるのか
全てわかっていて
「見せてくれないのね」とばかり
「にらみつける」。
意地っ張りな僕は、
そんなことされると見せたくなる。
ここら辺の駆け引きのような描写は
「ラズベリー」(『空の飛び方』1994年)
を思い起こさせます。
無理難題で僕を挑発?する「君」を
ひたすら追いかける「僕」の
可笑しくなるくらいな一途さ。
「ガラクタばかり~意地っぱり」までは
僕のことなんじゃないかと思いました。
そして君はそんな僕を
理解してくれて、
「ガラクタ」にも
興味を持ってくれたんじゃないかな。
驚いたり喜んでくれたんじゃないかな。
今まで他の人からは
理解されず(理解しようともされず)
無視されていたような大事な僕の「ガラクタ」。
初めて共感してくれた君の魅力に
僕は参ってしまった。
少しでも君に近付きたかった。
おかしな恋人ハチミツ 溶かしてゆく
僕のヘンテコな「ガラクタ」を
初めて認めて共感してくれて、
偽善や嘘が蔓延した
上辺を繕わないと生きにくい世の中を
冷めた目で俯瞰しながら
あれほど頑なに閉ざしていた僕の心を
温かく溶かしてくれた君は
不思議で魅力的な人。
蝶々結びをほどくように
珍しい宝石が拾えないなら
二人のかけらで間に合わせてしまえ
「蝶々結びをほどくように」は
「珍しい宝石が拾えないなら」
にかかっていると思いました。
「蝶々結び」は固結びと違って
下側のまっすぐな二本を引っ張れば
子供でも簡単にほどけます。
でも僕たちの関係はそんな簡単なものではない。
そんな簡単に
「珍しい宝石が拾えないなら
二人のかけらで間に合わせてしまえ」
この二行があるため、そのことに気付きました。
とても哀しい表現だと思います。
この二行がなければ、
甘く可愛いハッピーな歌で済んでいたでしょうに。
珍しい宝石が欲しいのではない。
珍しい関係ではなく
あたり前の関係でありたいと思った。
二人の関係は珍しいどころか
あってはならない関係だったのでしょう。
蝶々結びをほどくようにすら
簡単には「拾えない」くらい。
そこらへんに転がってて
誰でもすぐ見つけられるような
ありふれた当たり前の関係ではないのです。
最初から「宝石」なんて「拾えない」ことはわかっている。
だから二人が恋人だという既成事実を
作ってしまえばいいと思った。
「間に合わせてしまえ」と言ってるから
僕は君を奪うことを急いだんでしょうか。
夫か恋人がいるにも関わらず
僕に理解を示してくれて
愛情まで注いでくれた(ように思っている?)。
そうです、君は好きになってはいけない人。
危険な綱渡りをしないと近づけない人。
素敵な恋人ハチミツ 溶かしてゆく
灯りの場所まで綱渡りしたから
危険な綱渡りで君に近づいた僕。
まさか近づいてくると思わなかった君は
驚いたでしょう。
ひょっとしたら、
「ここまでお~いで」と
僕を待ってたかもしれない。
喜んでくれたかもしれない。
僕の心はさらにメロウにされていく。
【歌の感想】
可愛い歌詞やメロディに心奪われがちですが、
よくよく歌詞を聴いていると
ただ甘くて可愛いだけじゃない、
すごく切なく、
でも若い純粋な気持ちに溢れていると思います。
この歌に始まったことじゃなく、
スピッツの歌にはどこか
トゲというか
引っかかる部分
気になる部分がありますね。
耳馴染みが良く心地いいメロディに
つい騙されてしまいそうに?なる。
君は「恋人」「ハニー」「ハチミツ」
甘くて何でも幸せな味にしてくれる。
この上ない幸せな気分ですね。
素敵な恋人ハチミツ溶かしてゆく
灯りの場所まで綱渡りしたから
で終わる歌詞。
この歌で主張したい内容は
この二行なのでは?と思います。
アウトロを聴いていると
若さと向こう見ずな達成感に溢れる僕が
思い浮かびます。
後先考えず、行けるところまで行ってしまえ!
みたいな若い暴走感。
危険を冒して君に近づいた僕の暴走感は、
「スパイダー」(『空の飛び方』1994年)の
君を奪っていく感に似てるかな、
と思いますが、どうでしょう?
「スパイダー」では、君のことを
♪さびしい僕に火をつけてしらんぷり
「ハート型のライター」と呼んでいます。
♪加速したら二度と戻れない
こがね色の坂道は、
この綱渡りと同じようですね。
「ラズベリー」では
♪この世の果ての花火
と歌っています。
「スパイダー」でも「ハチミツ」でも
同じように
僕は心に火をつけられたようです。
やっぱり僕の心は溶かされていったんですね。
二人はその先どうなるんでしょうか?